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最高裁判所第三小法廷 昭和38年(あ)1251号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人雨宮勘四郎の上告趣意(一)は、違憲(二二条一項違反)をいうが、道路運送法四条一項、一二八条一号が憲法二二条一項に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和三五年(あ)第二八五四号同三八年一二月四日判決、刑集一七巻一二号二四三四頁)の趣旨とするところであるから、所論は採ることができない。

同(二)は、事実誤認の主張であり、同(三)は、量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。

また、記録を調べても、同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて、同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 石坂修一 九鬼上堅磐 横田正俊 柏原語六)

弁護人雨宮勘四郎の上告趣意

一、上告事実論としての基礎的資料に価すると思はれる上告人等が昭和三八年一月東京高等裁判所に提出した控訴趣意書を茲に援用する。

二、かくて、右控訴趣意書は次の三点について、上告趣意書の要点とする。

(一) 道路運送法のタクシーに関する部分は本件の実際問題に照して憲法違反である。

即ち、原判決は、道路運送法は憲法上営業の自由を制限するものであるか、その制限は公共の福祉の為必要なものであるから憲法違反ではないとした。

然しながら同じ営業の自由制限でも例へば鉄道の免許軌道の特許バスの免許等は交通秩序の為に免許を以て統制する必要があると思はれる、然しながら僅少のトラツク会社(一般区域貨物自動車運送事業)やタクシー業者(一般乗用旅客自動車運送事業)について鉄道バスにも似たる統制法規を適用するのは憲法違反ではなからうか。

鉄道や軌道バス事業を自由営業に委ねたら其混乱は火を睹るよりも明らかであり其の結果損害は社会に帰へて来るのであるから鉄道軌道バス等に関する部分を憲法違反と言うことは出来ないであらう。

しかしタクシー、トラツク等を自然の調節に委せることが却へつて自然であることは他のあらゆる産業と同一視してよいであらう。

国家の徒らな干渉は、或は新規希望者と既設免許者間の相剋も予想され而かもタクシー、トラツク等の適当量数の如きは一官僚組織でよく把握するところではない。タクシー、トラツクの免許をめぐる諸トラブルは自由制にすることによつて解消されるものであり、終戦前は免許制などはなかつたのである。

右の次第であるから道路運送法中少くもタクシー免許の部分には憲法違反の部分がある。

(二) 前記控訴趣意書第一点事実誤認

(三) 第三点刑の量定不当については

刑訴第四一一条に対する御庁の職権発動により著しき正義に反する。適当の御裁判を求めるため、本件上告に及ぶ次第であります。

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